皆さんは、ふだんラジオを聞きますか?
好きなラジオ番組に、メールを送ったことはありますか?
このデータベースでは、1947年〜1948年のあいだに、『街頭録音』と『社会探訪』というラジオ番組への感想・意見・要望として、日本放送協会(NHK)宛てに送られた約250通の投書をデータベース化して公開しています。
主に東京・銀座で街ゆく人々にマイクを開放し、時事問題についての意見を募った、現在のインタビュー番組のはしりである『街頭録音』。
『街頭録音』から発展して、街での公開録音に参加できない人々の声を拾おうとマイクが出張した、現在のドキュメンタリー番組のはしりである『社会探訪』。
戦後はじめてラジオから一般の人々の声が盛んに流れだしたとき、どのような投書が届いていたのでしょうか。
このデータベースを活用し、何十年もの時を超えて、占領期当時のリスナーたちの感想・意見・要望にぜひ触れてみてください。
太田奈名子(日本学術振興会特別研究員、2022年3月現在)
日本におけるラジオ放送は、1925年に始まりました(参考:NHKアーカイブス・NHK放送史「NHK短編映画 電波の歩み」)。ラジオ放送に対して投書を送る習慣は昔からありましたが、戦前は主に、NHKの職員が番組制作の参考にするために投書を読んでいました。しかし、第二次世界大戦後、日本が連合国の占領下に置かれた占領期(1945年~1952年)に、占領軍(GHQ)によりラジオ放送を民主化する抜本的な改革が行われました。その際、大本営発表に代表される、国民の声を無視して一方的に国家宣伝を肩代わりする戦中の放送体制・内容は一掃されました。その結果、いま皆さんが聞いているような、ラジオ番組で意見・相談・要望を募り、リスナーの声を紹介する投書番組(間接的な聴取者参加番組)や、リスナー自身が登場するインタビュー番組(直接的な聴取者参加番組)が始まりました。リスナーも投書も、裏方ではなく、表舞台に出てくるようになったのです。
「占領期ラジオ放送・投書データベース」のデータは、NHK放送博物館(東京・愛宕山)所蔵の貴重な歴史的放送資料に掲載されている投書を書き起こし、許可を得て転載したものです。その資料は、NHK放送文化研究所が編集していた『投書週報 自昭和二二年四月二〇日(六一号)至昭和二三年四月三日(一一〇号)』です。NHK放送文化研究所は、週ごとに、全国から届く投書のなかでも番組制作に役立つと思われる、あるいはリスナーの声として重要だと思われるものをまとめていました。
なお、ここで公開している投書がどのようにGHQに利用されていたのか、送り主たちの意見を総合すると何が見えてくるのかなど、投書をもとにした占領期ラジオ放送の分析・考察に関しては、拙著『占領期ラジオ放送と「マイクの開放」ーー支配を生む声、人間を生む肉声』(2022年、慶應義塾大学出版会)、とくに第7章「大衆を露わにする〈肉声〉、あるいは民衆を消す〈声〉――涙する投書と太宰治「家庭の幸福」」をご参照ください。
「投書本文」にはどのような文言があったのか、「週報号数・期間」で区切るとどうか、送り主が住む「都道府県」によって違いはあるか、「性別」や「職業」などの属性をもとに検索するとどうなるか。データベースの活用によって、歴史的なラジオ放送に少しでも興味をもっていただいたり、今現在のラジオ放送のあり方を考えなおしたりしていただけましたら幸いです。
『投書週報』総覧をご希望の方は、
こちらまでご連絡ください
本サイト制作にあたっては、日本学術振興会科学研究費助成事業・特別研究員奨励費「ラジオに聞く日米貫戦史――占領下日本(1945-1952)の放送から発展して」(課題番号 20J00227: 2020年4月- 2023年3月)のご支援、早稲田大学政治経済学術院・土屋礼子先生のご指導、株式会社エフズフィールドのご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。